【2018年7月第2週のまとめと来週の主な予定】
●2018年7月第2週のまとめ
・週間指数動向
先週末に米国による500億ドル規模の対中関税措置が発動。今週はこの500億ドルのうちの未定の160億ドル分が決定していない中、政府高官による2000億ドルの追加関税措置発言で乱高下する展開に。主要市場は乱高下の末に終わってみれば全市場が前週比プラス圏で終了。東京は円建て日経、TPXは4週ぶり、ドル建て日経は5週ぶりの反発。米国はDJIA、S&P、NASDAQともに続伸。DJIA、S&P500は3月初旬に記録した5%超の急続落に対して引き続き戻りの鈍い展開。欧州は、FTSEは反発、DAXは続伸。関税措置の対象国中華圏指数は、香港は6週ぶり、上海は8週ぶりの反発。今週はNASDAQが6月中旬以来の史上最高値更新。年間ベースではDJIA、S&P500、NASDAQがプラス圏を維持。総じて通商問題に振られた一週間に。
ここからは、引き続き年初来高値水準に対して戻りの鈍い展開のなか、米2Q企業決算への期待を背景に直近の「債券高+株高のミニ・ゴルディロックス様」または「債券安+株高」から上昇継続の展開となるのか、通商問題の悪化懸念から再び調整が警戒される展開となるのかに注目。

・週間為替動向
今週も、引き続き通商問題に振られる展開に。週を通すとUSD>AUD>EUR>CNH>JPY安のUSD高、USDX高。JPYはストレート円では円安、クロス円でも円安の「円安」で東京指数には順風の展開。また、人民元はいったんの元高アンワインドからジワリ元安方向に。引き続き新興国通貨安(≒USD高)によるリスク資産軟化に警戒。

・週間債券動向
期待インフレ率(BEI:10-Year Breakeven Inflation Rate)は、減産幅縮小で通過したOPEC総会後の原油高が、「貿易戦争」による将来の需要減に対する懸念、リビアの原油積み出し港稼働再開による需給緩和懸念から低下。この期待インフレ率の低下を背景に債券利回りも低下して10年債利回りが2.8%台前半で推移する一週間に。
この間、債券のボラティリティーを表す「TYVIX」は緩やかに低下傾向。また長期ゾーンの低下とFF金利に関わる短期ゾーンの突き上げ圧力からイールド・カーブのフラット化傾向は変わらず。

5年先5年物予想インフレ率(5y-5y Forward Inflation Expectation Rate)も概ね横ばい。原油価格の押し上げ効果以外にインフレ期待がなかなか盛り上がらない構図は変わらず。これに対して「ビハインド・ザ・カーブ」を嫌うFEDの金融政策と実体経済の綱引きの構図も変わらず。10年、30年債ともに数年来の高値水準から一服するなか、引き続き「低金利+リスク資産買い」の「ミニ・ゴルディロックス」で堅調に推移できるのか、「金利低下(上昇)+リスク資産売り(買い)」の「伝統的反応」で推移していくのか引き続き注目しておきたいところ。

・コモディティー他
オイル(原油)は、OPEC総会での減産幅縮小をイラン制裁による需給懸念が上回って高止まりの展開から、前述した貿易戦争による将来の需要減、リビア原油積み出し港稼働再開による需給緩和懸念で大幅に反落。さらに、OPEC総会に向けて上昇傾向が顕著だった銅の下落が止まらず。株価指数は以前はオイルと正の相関が高い期間があったものの、直近では原油高について行けずに割り負け気味で展開。ここからは原油反転が金利の押し下げ効果を刺激、金利低下が非伝統的金融政策下の象徴でもあった「ゴルディロックス」を引き起こしリスク資産の嵩上げ要因となるのか、素直に将来の「懸念」として警戒感が高まってくるのか注目していきたいところ。

他方、「炭鉱のカナリア」ハイイールド債はリスク資産に若干先行して切り返す展開に。引き続きリスク資産、債券、為替市場の動向とあわせて今後の展開に注目しておきたいところ。
・その他
サプライズ・インデックスは、強弱の節目「0(ゼロ)」を僅かに割り込んでいったん反転。通商問題の悪化、ドル高による企業業績圧迫に懸念が残るなか、各アセット間、あるは同アセット内での循環物色のなかで資金循環が維持されて上昇が期待される動きとなるのか、債券安+ドル安+リスク資産安のトリプル安のリスクオフに至るのか注目しておきたいところ。

S&P500は「EUに対する自動車関税」による材料で6/22→6/25にギャップを形成。この戻り抵抗を突破して直近の戻り高値2800ポイントに到達。ここからは取り返したギャップ水準をサポートに変えて戻り局面に移行できるのか、2800ポイント処でのダブルトップ形成から戻り一巡が警戒されるのかに注目。また一足先に史上最高値を更新したNASDAQは、一時期よりFANGの関与が低下傾向の模様も、引き続きここへの集中投資で「行き過ぎ」の状態にならないか注視しておきたいところ。

通商問題悪化に対する懸念は払拭されないものの、CNN-Fear Greed Indexのセンチメントは若干改善中。また、Put Call ratio(CPC)も6月末をピークに低下傾向。先々週同稿の「センチメント悪化と併せて「ブラックスワン」は若干否定的な印象。また、これらの動向を勘案すると「底入れ近し?」を視野に入れておく必要も」との言及は今のところ期待が持てる状況。

●来週の主な予定
16日(月)
中国GDP(第2四半期)
中国小売売上高(6月)
中国鉱工業生産(6月)
米小売売上高(6月)
EU中国首脳会議
米露首脳会談
17日(火)
米鉱工業生産(6月)
パウエルFRB議長、上院銀行委員会で半期に1度の議会証言★
18日(水)
米住宅着工件数(6月)
米地区連銀経済報告(ベージュブック)
パウエルFRB議長、下院金融委員会で半期に1度の議会証言★
19日(木)
豪雇用統計(6月)
米景気先行指数(6月)
クオールズFRB副議長、講演
20日(金)
日本消費者物価指数(6月)
セントルイス連銀総裁、講演
21日(土)
G20財務相・中央銀行総裁会議(22日まで)