●2018年10月第3週のまとめ
・週間指数動向
今週は、引き続き新興国通貨安、通商問題悪化懸念が小康状態で推移するなか、中国(株式市場軟化≒通商問題)、中東(サウジ問題、原油価格低下)、欧州(イタリア財政問題)の三極リスクが浮上。これらを受けた債券利回り上昇懸念、指数ボラティリティー拡大を背景に高安まちまちの一週間に。主要市場はDJIA、SPX、FTSE、DAXがプラス圏で推移。東京は三指数ともに下げ幅は縮小したものの3週続落。米国はDJIA、S&Pは4週ぶりの小反発、NASDAQは3週続落。欧州は、イタリア財政赤字問題、Brexit問題があるもののFTSEは3週ぶり、DAXは4週ぶりの反発。中華圏指数は、香港は4週続落、上海は続落。今週の年初来高値、史上最高値更新市場はなし。上海が2015年上海ショック後の最安値を更新。年間ベースでは米三指数がプラス圏を維持。
来週は、引き続き通貨戦争、通商問題に加えてボラティリティー拡大による波乱継続が警戒されるなか、米2018/3Q企業決算本格化で足元の業績を確認すべくいったん下げ一巡となるのか、11月の米中間選挙、通商問題の再燃懸念、ボラティリティー拡大が終息せずに調整継続が警戒される展開となるのか注目。
・週間為替動向
今週の主要通貨は、総じて新興国通貨安は小康状態を維持。USD安傾向が一服する一週間に。週を通すとAUD高≧USD>CNH>EUR=JPY安。JPYはストレート円では円安、クロス円でも円安気味で東京指数には若干追い風の展開。引き続き新興国通貨安の再燃とCNHへの波及、「三極リスク」が警戒されるなか、新興国通貨安(≒USD高)によるリスク資産軟化に警戒しておきたいところ。
・週間債券動向
今週の債券市場は、10年債利回り上昇一服で直近の米債利回り上昇懸念を契機とした低ボラティリティー相場のアンワインドは終息傾向。しかし「三極リスク」による「リスクオフの債券買い」が綱引きする展開に。米債利回りは10年が3.1%台で推移。イールド・カーブのスティープ化はいったん終息する展開に。
この間の債券ボラティリティーを表す「TYVIX」は上げ詰まりから小康状態を維持。ボラ過剰収縮からの反動はいったん終息模様の展開に。
欧州国債はイタリア財政赤字問題に対する懸念による「リスクオフ」から「ドイツ国債買い+イタリア国債売り」に傾いてスプレッドが拡大するものの、週末にかけて若干アンワインドされる展開に。しかし、金曜日NY引け後に大手格付け会社の一角ムーディーズが、イタリアの信用格付けを従来の「Baa2」から1段階引き下げて、投資適格級で最も低い「Baa3、安定的」と発表。これが来週にかけての波乱の火種とならないか警戒しておきたいところ。
期待インフレ率(BEI:10-Year Breakeven Inflation Rate)は原油価格上昇一服と、「三極リスク」によるリスクオフムードを受けて反転模様の展開。5年先5年物予想インフレ率(5y-5y Forward Inflation Expectation Rate)も期待インフレ率と同様の展開に。原油価格の押し上げ効果以外にインフレ期待がなかなか盛り上がらない構図が変わらないなか、政治要因、金融政策に振られる展開に。これに対して「ビハインド・ザ・カーブ」を嫌うFEDの金融政策と実体経済の綱引きの構図も変わらず。

10/19現在のFEDによる12月利上げの市場織り込みは78.0%でこちらは前週の78.1%でほぼ変わらず、4回/年の利上げを織り込みつつある状況を維持。これらを背景に、10年、30年債ともに数年来の高値水準を突破しつつあるなか、「金利低下(上昇)+リスク資産売り(買い)」の「伝統的反応」で推移していくのか、どこかの時点で金利上昇にリスク資産が耐えられなくなって「債券安+株安」に転じていくのか、「低金利+リスク資産買い」の「ミニ・ゴルディロックス」に転じて堅調に推移するのか引き続き注目しておきたいところ。
・コモディティー他
オイル(原油)は、ドル高、「貿易戦争」による将来の需要減に対する懸念、米大統領による「値下げ要求」、サウジアラビアが増産に前向きな姿勢を示したことから売り物がちの展開に。原油低下による金利の押し下げ効果と、中央銀行による金融政策の変更、政治要因による金利上昇バイアスとの綱引きがどのように推移していくのか引き続き注目していきたいところ。今後は、原油が再低下、金利低下バイアスに転じて非伝統的金融政策下の象徴でもあった「ゴルディロックス」を再燃させてリスク資産の嵩上げ要因となるのか、素直に将来の「懸念」として警戒感が高まってくるのかも併せて注目していきたいところ。
「炭鉱のカナリア」ハイイールド債はリスク資産に歩調を合わせて大幅に下落するもののいったん下げ渋りの展開に。引き続きリスク資産、債券、為替、コモディティー市場の動向とあわせて、「突然死」しないか今後の展開に注目しておきたいところ。
先週急騰劇を演じた金は伸び悩みの展開に。引き続き金価格上昇がドル安への胎動なのか、リスクオフ警戒の安全資産買いなのか要経過観察。
・その他
サプライズ・インデックスは、引き続き強弱の節目「0(ゼロ)」付近で膠着の展開に。通商問題の悪化、ドル高、金利上昇による企業業績圧迫に懸念が残るなか、経済指標の悪化傾向がSPXの許容PER低下を引き起こさないか注視していきたいところ。引き続きアセット間、あるは同アセット内での循環物色のなかでの資金循環が維持が止まり、流動性低下状態に陥らないかに注目しておきたいところ。
市場センチメントは、通商問題悪化、新興国通貨安に対する懸念、リスク資産急落とボラティリティー急上昇で引き続き悪化状態。11月米中間選挙を睨んだ思惑が交錯するなか、このまま薄商い+低値幅+低ボラの「ゴルディロックス」相場への決別となるのか、政治要因、あるいは通商問題の改善から改めて年末高に向かう展開に移行していくのか注目しておきたいところ。
●来週の主な予定と決算発表
22日(月)
予算案に対するEUの警告を受けたイタリアの回答期限★
23日(火)
カーニー英中銀総裁、講演
ダラス連銀総裁、講演
ミネアポリス連銀総裁、講演
フューチャー・インベストメント・イニシアチブ(サウジアラビア、25日まで)
決算;ベライゾン、マクドナルド、3M、ユナイテッド・テクノロジーズ、テキサス・インスツルメンツ、キャタピラー★、ハーレーダビッドソン(★)
24日(水)
独ユーロ圏製造業PMI速報値(9月)
米新築住宅販売件数(9月)
米地区連銀経済報告(ベージュブック)
アトランタ連銀総裁、講演
クリーブランド連銀総裁、講演
カンザスシティ連銀総裁、講演
WTO閣僚会合
決算:マイクロソフト、ビザ、ボーイング、UPS、フォード
25日(木)
安倍首相、訪中
トルコ中銀政策金利★
ECB政策金利★
ドラギECB総裁、記者会見
米耐久財受注(9月)
米中古住宅販売成約指数(9月)
クラリダFRB副議長、講演
クリーブランド連銀総裁、講演
決算:アマゾン★、アルファベット、インテル、メルク
26日(金)
米GDP速報値(第3四半期)★